提出期限は、2005年10月6日、国交省山鳥坂ダム工事事務所到着分まで
 「山鳥坂ダム環境影響評価方法書」に対して 
   意見書を提出しました
意見書全文2005/10/3  
      「鳥は友だち」所属〕        
愛媛県内でも数少ないクマタカの繁殖が記録された場所に、
肱川の洪水対策を目的とするダムが作られようとしています。
はたしてクマタカは生き残れるのでしょうか。
クマタカと石鎚山(イラスト:泉原猛)
                           

                                                         2005103

      国土交通省四国地方整備局山鳥坂ダム工事事務所長 殿

                                         泉原 猛
 「肱川水系山鳥坂ダム建設事業環境影響評価方法書」に対する意見書

 下記の通り、意見書を提出します。
                                           

【全体として】一般国民に対していかに理解を求めるか、それがどの程度真摯に考えられた「方法書」となっているかについて、全体を見る。

1)分かりにくい。非常に不親切な造りである。その原因は次のようなものではないかと思われる。

(1)各章の冒頭または末尾に「前文」や「概説」「結論」などその要点を捉えた部分がない。いわば報告書等の構成要素を備えていない。すなわち最低の要件が満たされていない。

(2)もっとも重要な「予測の手法」「評価の手法」「調査、予測及び評価の手法の選定理由」の各欄が判で押したように事務的である。具体的な内容が見えない。

(3)図と表の羅列が多い。説明についても名称、凡例のみ。影響評価の手法・方法の提案には、基礎データよりも具体的な説明が必須。

(4)「国土交通省四国地方整備局」の発行だが、この内容では、ほかの事業で使用されたものの様式に単純に当てはめたものと思われ、形式的な整合性は取れているのであろうが、読む側からは不便。作成担当の委託会社()ダム水源地環境整備センターの資質や姿勢に疑問を抱かせる。

(5)ホームページで見る「環境検討委員会」の討議内容では、委員でさえ理解しがたい様子で、質問に対する事務局の説明が多い。また時間切れの様相を呈したままである。その問題点や完結していない討議等について勘案した「方法書」となっていない。怠慢に見える。

2)国民の税金(経費)が、かかり過ぎている。

  (1)経費がデータ偏重に使用された形跡が強く、実質的な評価の手法・方法が示されていない。

  (2)この程度のものをまとめるために平成17年度だけで、291万円(ダム事務所随意契約)の支払い業務契約はあまりに過大な経費がかかっている。

  (3)単純に該当予算の年度内消化としか受け取れない内容である。税金の有効活用が望まれる。

3)経費と、成果物としての「方法書」は不可分のものであるから、その関係を示さなければならない。

経費に見合っただけの成果物が得られているかどうか検証するための「山鳥坂ダム建設事業環境影響評価随意契約結果及び契約の内容」一覧表を、「方法書」の中に表示しなければならない。

4)随意契約である以上、その調査方法や契約者の能力等の信頼性が重要である。

最低以下の内容の掲載が、納税者への説明義務として求められる。その全部が欠落している。

  (1)各業務委託契約会社名とその実績大要一覧

  (2)業務に従事した担当調査員名とその資格ないし実績一覧

  (3)専門用語ではなく、市民(納税者)の理解出来る叙述文での「調査方法」等の説明。作表の関係などで不可能な場合は、余白あるいは巻末などに「語句説明」を行うのが常識である。

5)地元住民などからの「聞き取り調査」の実績がどこにも示されていない。あるいは行われなかった可能性がある。「調査項目」として掲げているだけで報告が行われていない。

6)本方法書を検討した「環境検討委員会」の責任が不明確。

  (1)委員の一覧表を「方法書」内に掲示しなければならない。

  (2)ホームページによれば、その担当専門分野に疑問を抱かせる委員構成が見受けられる。またその疑問の「提起」に対し、事後適当に担当替えをした形跡も見られる。

  (3)検討委の1回から3回までの議事録によれば、時間の不足や討議の不十分さから方法書としてまとめる時期に至っていない。事務局提案に対する大雑把な「追認」にしかなっていない。

7)もっとも重要な「調査、予測及び評価の手法の選定理由」のよりどころとしている「手法に係る省令」についての一切の説明がない。「勝手に調べよ」の姿勢ではよくない。

8)経費節減と、調査方法の改善が望まれる。
自然環境に対していかに影響を与えないよう開発するか、その方法について調査する手法としては、環境保護の見地から経費の使い方に問題がある。

一例として「保護を行いながらの調査方式」を挙げる。「平成17年度山鳥坂ダム鳥類(上位性)調査業務委託」の47,250,000円(税込み)を持ってすれば、雇用者側社会保険等負担を考慮しても年収500万円の給与を支払える優秀な「レンジャー(国立公園監視員)」資格職員が9名も雇用可能。この事業区域とその周辺部に9名ものレンジャーが毎日勤務し、保護活動を行いながら自動的に生きた調査データが集積出来る。また世界一の密度を誇るレンジャー常駐の地域として、自然観察学習拠点として全国的に知られることともなろう。その中で開発策を考えれば税金も国土も生きる。さらに「哺乳類業務委託」では、テンの調査のみに23,625,000円が計上されている。この経費だけでも4名以上のレンジャーが1年間常駐できる。その他の分野(環境影響評価に関する検討業務委託、河川計画調査等業務委託、水質予測検討業務委託、生態系等環境調査業務委託、風土資産調査業務委託、用地補償技術業務委託)を加えれば17年度のみで29,001万円の支出である。現在の方式では、調査のために対象区域を損傷している側面が強い。改めなければならない現状であり浪費とも言える。「獲得した予算の消化」に工夫を凝らすべきであろう。国家財政危機の今日、このような問題点こそが国交省関連機関の民営化要求の根拠となる。

 従来の方式を英断を持って改め、保護をしながら調査データを得、同時に市民の理解を深める場とすることの出来る、新しい制度の導入への勇気ある転換が望まれる。

9)環境影響評価検討委員会の開催と経費の不符合その他。

98,175,000円の予算額の中で実施されるにしては、今までに3回というのは少な過ぎる。したがって「方法書」そのものがデータ羅列中心の非常に粗雑な作りとなった。議事録を見れば、各委員が事務局案を理解するための沢山の質問を行っている。事務局の長大な資料説明も意味をなしていないようである。さらに上記予算の計上が潤沢すぎるため、かえって非能率的な「方法書」として結果している。すなわち「方法書」そのものの作成業務担当者である()ダム水源地環境整備センターと、調査員および調査会社(()四電技術コンサルタント、国土環境()四国営業所その他)、事務局、検討委等相互が有機的なつながりを見せていない。分断化したままの実態がそのまま「方法書」の、事務的な体裁に現れている。一例として、ホームページ内の「クマタカの調査について」の「平成16年までのクマタカの行動圏」の概念図を見ても、河辺川は北に向かって逆流している。営巣地をぼかすための操作のつもりかも知れないが、まさか小田川側への移動と考えるものはいないであろう。このような単純明白な誤りさえ気付く部署がないのであろうか、悲しむべき実態である。税金の生かされない契約方式や影響評価方式の抜本的な改革が望まれる。ここにも「民営化」を要求される「無駄遣い」のようなものがうかがえる。

以上の諸点から、当「方法書」は構成をし直すか初めから改稿しなければならないほど欠点が多い。さらに言及すれば、評価の取り組みを行うのは「人間」であって、その人間の顔の見えない事務的な「無人格の方法書」となっている。行政関係文書の一つとして重要な形式・様式であるかも知れないが、全体として人間的な温かみに欠ける。ひるがえれば「山鳥坂ダムを建設しなければならない」という熱意が感じられない。このことは調査データの信憑性にも関わる大きな問題点ではないだろうか。

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【クマタカなど鳥類関係について】 一個人の判断かと思わせるほどに偏重している部分が多い。「方法書」では意識的にこの部分を排除したのか、検討委員会の議事録等によって理解するほかない。

1)「クマタカを上位性の注目種から外す」理由が明記されていない。その意義、目的などがはっきりしない。詳しい説明が必要である。

それに関わる問題点の幾つかは、以下の通り。

(1)「注目種から外す」決定を行った環境影響評価検討委員会が、正しく機能していない。

   まず、検討委員会に提出された「資料」が出発点から問題を内包している。
   事務局説明の「上位性の注目種の選定」の観点のうち「周年生息している留鳥なのか」が「年間を通じて生息もしくは繁殖」に差し替えられた【第3回検討委員会議事録(以後、議事録)p.7及びホームページ.「生態系上位性の考え方について」参照】。

   差し替えた理由を説明する必要がある。差し替えに気付いている委員さえいない。

この選定の観点の差し替えとは別に、クマタカ排除の理由を事務局は以下のとおり挙げている。

「・平成14年以降、繁殖や採餌などの主たる活動の場が事業実施区域及びその周辺では確認されなくなっている。この外に移っている。・事業による影響評価を行う対象区域に形成される生態系の上位に位置しているとは言えなくなった。」

この説明の具体的な根拠は、「方法書」はもちろん議事録中にも述べられていない。この地域の周辺では確認され続けている上に、地形、植生、人との距離、餌動物の分布、現地専門家の観察記録によれば主要な生活圏と判断される。外に移っているというのは、「生活圏」を異常に狭く設定しているのが原因である。営巣場所が一つ東の谷の斜面(推定で4キロメートルほど)へ移動したのみで生息環境の評価の頂点から外す根拠は限りなくゼロに近い。営巣木のみに固執して調査観測している結果である。【議事録p.8及びホームページ.先述「クマタカの行動圏」のイメージを参照】
影響があるのかないのか、生息しているとするべきか否か、を議論する委員会の場に「先ほど所長から説明がありましたように、影響のないものを生態系の上位種として評価してしまうと、わかり切った結論といいますか、現時点ではということでございますが、そうなってしまいますので、」とする事務局説明(議事録p.22)のように、意見を聞く前に決め付けてしまっている。これは事務局の越権行為である。事務局はもとより、そのことに異議を唱えない委員長や委員も問題。

(2)平成14年以降の実態だけで、しかもごく近くへ営巣地、というよりも営巣木が移動したのみで、この現状を根拠とするのは無理がある

急いで結論を出す姿勢に問題がある。科学的な調査としては以降最低5年間、過去に営巣していた環境の徹底した分析と移動の原因、今後の推移について特に注目し調査する必要がある。

(3)今後周辺部のみならず、事業区域に定着、繁殖の可能性は充分にある。

クマタカの繁殖周期は2年ないし3年であり、また猛禽類の中でも、生まれた子供を親とは異なるテリトリーに追いやるという「追い出し行動」を比較的行わない種として知られており(森本、飯田、1992、『日本のワシタカ類』1995)個体数の増加は、かつて営巣していた事業区域を生活基盤とするクマタカの現れることが充分に予測される。

 

(4)異常な調査態様が見られる。

ホームページの「山鳥坂ダムにおけるクマタカ調査の実施について」によれば「9年間に及ぶクマタカ等猛禽類調査を実施してきています」とあり1000時間以上の調査を行ったとある。それこそが問題であろう。調査は「量」ではなく「質」である。可能ならば最短時間ですべての解析が可能な調査を行うのが理想であろう。その対極にあるホームページの解説にはあきれるほかない。「調査」と「趣味」の次元を混同して行っているような調査員の偏向資質がうかがえる。仮にクマタカの自然寿命を人間の8分の1とすれば、人間の時間換算で8000時間もの「邪魔」を行ったことを意味する。このような生態学の基礎を理解しないまま調査している実態は、科学的な素養の欠如を意味する。観察時間のみを誇る行為は単なる「追い出し効果」しかもたらさないことを技術的に優れた調査者は理解している。今後の調査にその点、注意を促したい。

(5)事業区域の特殊性についての、調査分析手法の問題意識がない。

ホームページによれば、「猛禽類保護の進め方(特にイヌワシ、クマタカ、オオタカについて)」(環境庁自然保護局野生生物課編、1996)などを参考としていると述べているが、それならば余計に「山鳥坂ダム事業区域」におけるその地域の特殊性に注目した調査報告が求められる。

   すなわち事業区域の地形的な特殊性(肱川の河岸段丘に広がる田畑、集落、里山の総合的な景観    が意味する生活空間の多様性、また営巣に適した河辺川の渓谷両岸に連なる急峻な傾斜地の森林、県道の近代化改修工事が行われなかったための昔ながらの動植物の生態的多様性の保持、大きな集落が少ないことからくる水質の優良性等々)についての有機的総合的な見地からの調査が行われていない。営巣箇所とその周辺部の生活圏についてのデータのみを引用、数少ない参考文献に頼りすぎた結果、「視野の狭窄」を招いている。頼りとしているらしい文献に基づく調査の姿勢は非常に狭隘な視点を感じさせる。

2)クマタカを外し、代わりにオオタカ、サシバを選定したのは妥当とは言えない。

これは、「注目種選定」の観点に当てはまらない。

  両種とも「年間を通しては生息していない」。

オオタカは「冬鳥」である。県下には幾つかの繁殖記録が現れ、「留鳥」と見る動きがあるが、「越冬ツバメ」などと同じく、数例の特殊なものを指して「留鳥」と断定、区分することは学問上認められていない。さらにオオタカは、鹿野川ダム湖や溜池のカモ類をねらって冬季に北から渡来するものが多くなる。冬季渡ってきた個体と越夏個体の区別をどう行うかの問題意識もない。一般的な観察で可とする選定に留まり、識別の不可能な状態についての考察が一切ない。このような特殊な種の選定に重大な問題点があることの認識がない。越夏個体と冬季渡来個体とを区別もしないで影響評価を行うなどは論外である。

サシバは「夏鳥」、冬はいないことを知っての選定では常識を疑われる。サシバは、赤松の大木など明るい林に営巣、暗い森林に営巣するクマタカとは生態が異なる。さらに両種ともエサが大型と小型生物の違いがありその採餌の生態の相違点は大きい。採餌場所や条件が少なからず異なる。年間を通して生息している留鳥のクマタカをわざわざ排除し置き換える意味がない。「クマタカが今いない、ただし重要種としては調査を続ける」などという子供だましのような論理では、常識的に言って理解を得ることはきわめて困難であろう。

さらに観察の容易さについても、当該事業区の急峻な地形と植生ではオオタカよりもクマタカのほうがはるかに解析しやすい。またオオタカ、サシバが「里山」の鳥であるのに対しクマタカは「深山」の森林性の鳥、この大きな相違点を無視してはならない。

以上の問題点が指摘されないまま、委員会ではいつのまにか事務局提案のまま「事業区域にいないクマタカではなく、オオタカ、サシバでカバー出来る」を前提として議論している。そのため委員間の議論・質問に混乱が見られ、最終的に納得の行かないままに終わっている。【議事録p.7.p.27

3)検討委員会の位置づけ、委員の選考基準の不明確さ、その運営方法、検討時間等に問題がある。

  事務局主体の進行で、委員長の主体性のなさがきわめて明確である。事務局の説明時間が長く、実質の討議時間が不足している状態がうかがえる。実質的に意味のある討議がほとんど行われていない。各委員の専門的な知見や提案が、事務局案を超えているところが見られない。

「上位性」を巡って論理性に乏しい無理な提案がなされているために、討議する委員に戸惑いや混乱が見られる。

クマタカの「生活圏」や「態様」についてどう判断するかが重要な検討課題であるはずの委員会が、いつの間にか、事務局提案の「住んでいない」「エサを捕りにきていない」という「前提」からスタートしている。

上の問題点に加え、オオタカ、サシバとクマタカとの初歩的で基本的な、かつ重要な相違点について議論されているその場に「鳥類の専門家」は同席しているはずと思われるが、その問題点が指摘されていない。発言が禁じられているのか、問題意識を持っていないのか、奇異な会議となっている。

4)調査方法や手法、その結果に問題点が多過ぎる。

(1)調査方法について、「ラインセンサスや定位記録法、踏査」というもっとも大まかな表現しか見られず、具体性がない。したがって調査結果に基づいての発言であるはずの、先の事務局説明「生活圏がそこにはない」「注目種に該当しない」の根拠となるものが見当たらない。評価の手法にとっては根本的な問題である。根拠とするところを詳しく述べなければならない。

(2)該当地区は、クマタカの生活圏そのものであり、地元専門家の観察ではダム予定位置から半径5km圏内に、周年頻繁に出現している。その生活圏についての評価の根拠が示されていない。

「方法書」の調査方法の一つに「現地聞き取り」とあるが、実際に「聞き取り調査」が行われた形跡がない。またその報告項目がない。「営巣可能木調査」(後述)同様、今後追加すべき重要項目である。

(3)平成4年度から5年度にかけて行われた愛媛県委託の日本野鳥の会愛媛県支部による「平成4・5年度野生鳥類生息調査報告書―クマタカ調査報告―」が参照されていないか、または無視されている。当該区域は、その当時の調査地点としては空白地帯となっていた。県下の調査地30箇所のうち生息可能性のある地点は22箇所、推定生息数は29個体であった。今回、複数個体が生息また繁殖まで確認された事実について重大に受け止めなければならない。標高500メートル以上の森林で営巣繁殖するというクマタカの習性についての従来の見地から、全県下の調査地のうち、肱川水系地域だけが調査地から外されていた。そのごく狭い特別の地域に現在、繁殖や生息が確認されている事実について重視しなければならない。それをあえて外さなければならない根拠と理由を提示しなければならない。鳥類調査の専門家が関わっているのであれば、先にも述べたとおりその地域の「特殊性」について注意深い観察と調査の必要性について気付かなければならない。「影響がない、影響のあるところにいない」などという結論が出るはずもない。その科学的な根拠が示されていない。

(4)調査地点の設定など、猛禽類の調査には不適切な設定(数、場所、おそらくは調査員人数、期間、季節などが公開部分では不明)が見られ、図示その他によれば一種の偏執性さえ感じられる。「延べ1000時間以上の観察を行ってきた」も先述の通り異常な一面である。

(5)クマタカの飛翔出現について、意識的に過小評価している。

「平成14年以降、繁殖や採餌などの主たる活動の場が、事業実施区域及びその周辺では確認されなくなっている(議事録p.78.)」としているが、上空に飛翔している行動そのものが採餌や繁殖の基本行動であり、頻繁に区域内に出現する「飛翔現象」を正確に理解していないか、理解しようとしていない。環境影響評価は「繁殖」のみを見るものでないことは自明の理である。ここにも、厳しい生息環境であればあるほど広範囲に採餌場を求めなければならない猛禽類について、その基本的な視点の欠如と観察姿勢の偏りが見られる。

(6)調査員が特権意識を持って調査している。

「情報を出せば出すほど重要なクマタカが乱獲にあったり、カメラマン等、趣味の方が行かれて、撹乱行動があってクマタカの生活を脅かすことにつらなるものですから・・」「新聞に報道されて以降、クマタカの生息区域にかなりの人が見えられていると聞いております」と事務局説明がある。あたかも報道機関や一般市民が悪い、といわんばかりの説明である(議事録p.2425)。「趣味の方」と「地元の調査専門家」をどのようにして識別しているのか、非常識な発言である。腕章を着けていれば「クマタカに無害」と自認しているようで、「思い上がり」ともいえる調査活動が目立つ。地元住民に対する特権的な行為は、かつて日本野鳥の会本部に持ち込まれ問題化した事例がある。地元住民から、あれではクマタカやヤイロチョウを追い出しているようなもの、という批判を払拭するよう、調査員には特に思い上がりを捨てた謙虚な調査姿勢が求められる。

(7)ヤイロチョウのテープを流して調査している、と地元住民から苦情が出ている。囀鳴期はもとより、それを過ぎても人工的に囀りを流すことは繁殖や生息への重大な妨害行為である。違法な調査方法が取られている可能性が高い。

(8)この種の鳥類調査は、一般に数名ないし数十名のプロジェクトチームを編成して行うのが常識である。個人の偏った見識による判断や誤謬、誤認を防ぐためである。その方策がほとんど取られていない可能性がうかがえる。今まで見てきた事務局提案や委員会での説明、また委員会そのものの討議内容、方法書の出来具合(構成や説明、内容)などから、その危惧は十分にあるものと推測せざるをえない。調査チームの実態を明らかにし、説明すべきである。

5)「開示できないデータ」をもとに、一部、特別に公開してあげてもいい、などとする手法は、クマタカの場合、意味をなさない。

検討委員会に非公開の部分を設け、あたかもその重要なデータによって大事な判断がなされているかのように見せかけるのは有効ではない。むしろ「不利なデータ」の扱いに苦心しているとも推測される。すなわち、「営巣地」のピンポイントによる特定のみが非公開の対象となる程度であり、これとて観測の基本手法を持つ者には、クマタカの行動等からすぐに見当のつくものである。非公開のデータを持って、「一部、特別に公開してもいい」などというのは、特権意識の最たるものである。

6)ヤイロチョウのここ数年の、繁殖の可能性の高い生息についての認識がない。

  (1)「議事録」には、ヤイロチョウの文言すらない。2001年あたりから毎年、工事区域内(特に水没域内の林)でたびたび番(つがい)が観察され、写真撮影が行われた例も少なくない。

(2)「方法書」にヤイロチョウについての影響評価がなされていない。水没地域を含む営巣可能地およびその出現状況について、環境調査を含めてのデータ集積が必要。このヤイロチョウの環境影響評価の手法が欠落していたのでは「方法書」の体をなさない。

7)調査地域内における、クマタカの営巣可能木についての調査がなされていない。

 (1)2年前まで営巣繁殖を把握していながら、その最大の条件である「営巣木の調査」がなされていないか、報告されていない。

 (2)事業区域内で、そのような「営巣可能木」が最近伐採されたという地元住民の問題提起がある。伐採跡の切り株から、伐採時期、状態、大きさなどは十分に把握できるものである。その伐採の目的、発注者の所在氏名についての調査を行わなければならない。影響評価の重要な項目の一つである認識がなされていない。

 (3)残存する営巣可能木の調査が行われていない。今後の生息の可能性に関する環境影響評価の重要な基礎となる部分の欠落である。

8)「方法書」を巡って、常識を外れた現象が多過ぎる。

(1)調査内容や結果について、またその解釈などを巡って、国家公務員法に触れるものではないかも知れないが、特定集団(例えば日本野鳥の会愛媛県支部など)の会員限定の説明会を開くことが、公務員として適切な行為なのか疑問に思われる。公平性や公共性をもととする公告縦覧の機能を蹂躙するものと批判されても仕方ないのではないか。また、そのような行為そのものが「方法書」の欠陥を雄弁に物語っている。

(2)国交省の役職を持った者でもなく、また調査会社の発表でもないような部署から、勝手に「解釈」や「説明」が断定的な形で強調されることが多過ぎる。身分、資格、責任を明確にして行為すべきと考える。どこのどの部署がその責任を負担しているのか不明である。

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【山鳥坂ダム事業について】 総合的に見て、事業のの中止が望ましい

 この項の意見を提出する経緯について

本事業に極めて深く関係している人物から、以下のような言葉を繰り返し聞かされた。

「意見を述べることは、ダム建設事業に反対することである/現代社会においてその依存度はきわめて大きく、どれ一つとっても無駄なダムはないはずである/この時点で建設の可否を議論しても受け入れてくれる先はない。また、ダム建設に反対する旨の意見を述べても門前払いになる。事業はすでに認可されており、議論がさかのぼることは無いからである/ここに至って事業が中断されることはまずありません。」

これほどに断定的に強調されては、ほとんど関心のなかった者であっても、ついその正否について確認するため勉強をせざるを得なくなるものである。やむを得ず、その結果として得られた知見をもとに、門外漢ながら意見を述べる。

〔山鳥坂ダムの目的と価値に関して〕

1)「洪水調節と流水の正常な機能の維持」の2点のみが目的である(「方法書」2-1)。このような単機能に近いダムは、全国的にも珍しいとされる。

2)第1の目的「洪水調節機能」については、総貯留量24,900,000㎥のうち有効貯留量の23,300,000㎥の約半分(松山市の石手川ダム湖程度の容積分)を洪水調節用に利用するものであるため、下流域への洪水防止効果が望めるのか、鹿野川ダムの実績などから見て、学会や学識経験者等間でも問題視されている。

3)本年9月の台風14号の際は、総貯留量が11倍(集水面積は約8倍)もある早明浦ダムが一日にして0から100パーセントの満水に達した。この事実から見ても、小型小規模の本ダムが効果を発揮するとは到底考えられない。最近の気象条件の変化による降雨の実態からは時代遅れの計画といえる。

4)肱川水系の洪水対策は、堤防のかさ上げ並びに河川管理(いわゆる河床掘削や河畔林管理などのメンテナンス)が最も効果的かつ経済的であると、各分野から指摘されて久しい。

5)大洲地域で大体2年に一回程度やってくる洪水被害に対し、既存の鹿野川ダムがなんら貢献しておらす、むしろあるときは流入量よりも放水量が大きくなったため逆に被害を増加させたという「実績」のあることは周知の事実である。

6)「肱川の洪水流下能力の低下」が著しく、その数値は山鳥坂ダム約4個分に匹敵すると、治水関係の専門家に指摘されている。このような事態を招いたのは、山鳥坂ダムに固執するばかりで、四国地方整備局が河床の管理など肱川の維持、管理のメンテナンスを疎かにしている結果ではないだろうか。

7)「鹿野川ダムの治水能力」について説明するよう再三の要求に対しても、野村ダムと鹿野川ダム、あるいは鹿野川ダムと山鳥坂ダムを併合した数値などでしか示すことが出来ない実態にある。山鳥坂ダムの明確な機能についての把握がなされていないのではないか。すなわち鹿野川ダムの運用についての予測さえ困難な最近の事態から、判断不可能の状態にあることがうかがえる。

8)2004年の台風16号についての四国地方整備局の「河辺川区間の洪水被害額」は313700万円と発表。一方、肱川町役場の調査による実際の被害額は「農地が2箇所、合計1ヘクタールの冠水で被害額は20万円」だけである。いかに不誠実な統計調査や発表を行っているか、その実例が見られる。

 9)2005年の台風14号について、国と県は「鹿野川ダム、野村ダムによって、下流の水位を下げた-肱川はんらん 県などが評価-」として「東大洲地区の市街地へのはんらんがなかった」と発表(愛媛新聞2005917日付)。堤防整備の行われた東大洲地区への被害がないのは当然であり、堤防整備対策が不十分な西大洲、菅田地区の2年連続のはんらん被害については口をつぐんでいる。またダム堤体を守るための操作自体に問題があるにもかかわらず、都合のいい部分のみの広報が見られる。

10)2004719日の愛媛新聞“門”欄の「〝山鳥坂ダム不必要 河川改修を〟にお答え」で河川計画課長は「ダムに流入する水量より多くの量を下流に流すことはないので、ダムが洪水被害を助長することはありません」と断言しているが、830日には早くも放水量が流入量を超える操作が行われ、ダムの洪水調節機能は失われている。これらの問題点を踏まえて鹿野川ダムの放水トンネル新設など改修工事を行わざるを得ない事態を招いている。国や県などの「自らに望ましい」発言と事実との相違点がたびたび明らかとなり、この種虚偽の報告や発表に頼らざるを得ない実態は、もはや本事業の破綻を物語るものではないだろうか。すでに多方面での信頼を失っていると言えるのではないか。

11)洪水調節機能を失いかけている鹿野川ダムの半分の規模でしかない山鳥坂ダムが、有効な洪水調節機能を果たせるとは、到底考えられない。有効な別の選択肢を採るべきであろう。

12)水質調査結果(「方法書」3-28)においても、「鹿野川ダム」の「水素濃度の環境基準を満たさない検体数」は、358検体中122にも上っている。これは工場排水などで公共水面に流した場合、たちまち処罰の対象となる数値である。これら改善の方策が立てられない環境汚染の元凶となるダムを、さらに増設することは許されない。

13)以上の事例から見ても、山鳥坂ダムの目的は建設前からすでに失われており、将来長期にわたり負の遺産となることが明白である。

14)周辺の優れた自然環境、特に生態系の頂点にあるクマタカに代表される残り少ない県内の貴重な地域に、単機能・小規模ダムを建設するなどということは、真っ先に中止すべき公共事業と言える。せっかくの恵まれた国土に対し、「無用」というよりも「悪質な」リフォームを行ってはならない。

15)肱川流域の水質や自然環境に与える影響、水中生物やそれに依存する生物、いわば生態系全体に与える多大の悪影響を考慮すれば、ダムの建設によって益するのは、ごく一部の者に限られ、それもまた一過性のものに過ぎないことを知らなければならない。

16)17年度に投入される「影響評価調査費」だけでも先述のとおり3億円近くを要する。今後の投入国家予算のことを考えれば、費用対効果の面からもまったく問題にならない。将来の子孫に残す「負の遺産」であることは、現時点ですでに明らかだと言えよう。

17)肱川流域は県下でもっとも密度の高いヤマセミの生息地である。それは県下に残された最大の水系生態系の貴重な保全地域であることを意味する。それらのすべてに悪影響を与える本事業について、その洪水対策面の効果についての数々の疑問点から見れば、到底建設されるべきダムとは言えない。

強く本事業の見直し、中止を望むものである。

今一度、本工事の再検討を行って、真に有効な洪水対策から取り組まれることを切に願うものである。
                                                                                       以上

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〔以下、参考資料〕

意見書の提出1.提出期間  平成17823日(火)から平成17106日(木)まで
2.提出先〒797-1505大洲市肱川町予子林6番地4 国土交通省四国地方整備局山鳥坂ダム工事事務所調査設計課環境影響評価担当
3.必要事項 意見書を提出しようとする者の氏名および住所(法人その他の団体にあってはその名称、代表者の氏名及び主たる事業所の所在地)意見書の提出の対象である方法書の名称 →【肱川水系山鳥坂ダム建設事業環境影響評価方法書】
 方法書についての環境の保全の見地からの意見(日本語により、意見の理由を含めて記載すること)

【平成17年度山鳥坂ダム建設事業環境影響評価随意契約結果及び契約の内容
HPの「随意契約結果の公表」→「業務」→「山鳥坂ダム工事事務所」→ 8個の委託業務↓)

業務の名称

内容の概略

契約業者名(所在地)

契約金額()

用地賠償技術

工事事務所用地課が行う用地補償に関する業務の補助

()四国建設弘済会(高松市

11,970,000

河川計画調査等

整備局職員の図面・資料作成等の職務を補助(36ヶ月3)

()四国建設弘済会(高松市)

39,900,000

鳥類(上位性)調査

上位性注目種現地調査により基礎資料を得る

㈱四電技術コンサルタント(香川県

47,250,000

環境影響評価に関する検討

方法書、準備書()等作成と委員会運営補助

()ダム水源地環境整備センター(東京都

98,175,000

環境調査(哺乳類)

生態系(上位性)注目種の哺乳類(テン)の現地調査

国土環境㈱四国営業所(高松市

23,625,000

生態系等環境調査

影響予測を行うための自然環境項目の現地調査と資料整理

日本工営㈱四国支店(高松市)

29,610,000

風土資産調査

土地の成り立ちや地名由来から見た区域内の地形形状把握

NPO風土工学デザイン研究所(東京都

4,830,000

水質予測検討

既往検討で設定した水質予測モデルの調査結果の修正検討

㈱建設技術研究所四国支社(高松市

34,650,000

平成17年度契約金額合計

290,010,000

契約内容の具体的な詳細は → こちら工事事務所ホームページ から 随意契約結果の公表→業務→山鳥坂ダム工事事務所→8個の委託業務一覧からそれぞれをクリック

「山鳥坂ダム環境検討委員会」について詳しくは → こちら工事事務所ホームページ から 環境影響評価→「山鳥坂ダム環境検討委員会」についてはこちら をクリック

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〔質問に、今なお回答がありません〕2005/10/4

9月8日付「愛媛新聞“門”」に下記のような質問を載せてもらいました。
1ケ月近くたっても、まだ回答がありません。意見書提出期限の10月6日までには
多分間に合わないでしょう。「難しい質問」であり過ぎたのかも知れませんね。



        〔転載許可番号 G20060601-00058〕


         ●日本のダム、世界のダムなど、ダムについての学習や知識を深めるため、またデータ参照には → 「ダム便覧」

         ●溜池なども含む、あらゆるダム資料、最新ニュースなどを見るために → 「財団法人日本ダム協会のページ」

         ●山鳥坂ダムを巡るさまざまな情報、記録などを見るために →「山鳥坂ダム建設の中止を求めるHPヒジカワドットコム」

         ●山鳥坂ダム問題に取り組む大洲市議のページ → 「有友正本のホームページ」 

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「方法書に対する意見書」の概要が取りまとめられ、
山鳥坂ダム工事事務所から、県知事などに提出されました。

「肱川水系山鳥坂ダム建設事業環境影響評価方法書についての意見の概要の送付について」の文書が11月18日、山鳥坂ダム工事事務所から愛媛県知事、大洲市長、西予市長あてに送付されました。「記者発表資料」として、工事事務所のホームページに、2005年11月22日現在、右上「新着情報」欄にPDF文書で掲載されています。 → ホームページは、こちら

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