No.4   傷ついたキジバト  2005/3/19

その後の経過については、こちら → 「傷ついたキジバト、その後」 へどうぞ。


 3月6日の朝、何気なく庭を見た私は、小さな衝撃を受けた。
 いつもやってきている二羽のキジバトのうち、一羽の様子がおかしい。見れば左足を傷めているらしく体を地面に着けたままなのである。ほとんど歩けない様子だ。
 一般に野鳥は、足の跳躍力を使って飛び立つことが出来ると言われている。毎日、ご近所猫の「ジョナ」やんが必ず数回やって来る。飛べない鳥は、簡単に襲われてしまうに違いない。
 さらに、キジバトは地面を歩きながらエサを採る鳥である。歩けないようではたちまち飢えてしまうことも明らかだ。
 野生の生き物は、当たり前のことであるが、日々自分の力だけで食糧を確保している。だから、「病気」すなわち「絶命」を意味すると言っていい。誰もエサを運んではくれない。人間のように、歩けなくなったり病気になったりしても、互いに助け合って生きて行く仕組みにはなっていない。
 今更のように彼らの置かれている厳しい現実に思いを巡らさざるを得ない。

 さてどうするか。緊急避難としてしばらく「保護」すべきか、いや自然のままにまかせておくべきか、急いで判断をしなければならない。
 今にもあのジョナやんが、やって来そうではないか。
 原因は分からないけれども、傷ついているのはオスのほうのようである。
 キジバトは雌雄同色のためオス・メスの判別は一般に不可能である。ただ、うちの場合は区別が簡単だった。
 目の前で、オスがメスに向かって「コックン・コックン」と上体を上下させ、しきりにディスプレイ(求愛の行動)を行うからである。一緒にいるときに見れば、オスのほうが心持ち体が大きい感じがする。
 十数年前、近所の方が一羽のキジバトを持って来られた。左の腹部が猫にかじられていた。約1週間家の中で保護し、無事自然に帰したことがある。しかし六畳間一間をキジバトのために一週間も分け与えたのは不便だった。夜間はダンボール箱の中で休んでもらったのだが、それにしても今回のキジバトが完治するかどうかも分からない。
 昨年の夏、庭のタイワンフウの天辺で営巣していたが、すぐ真下でヒヨドリが子育てを始めたために、途中で巣を放棄したカップルに違いない。我が家の住人であれば、何とか助けてやらなければならないのではないか、などと脳内は混乱するばかりである。

   ヒョッコン、ヒョッコンとしか歩けないとは、こりゃ大変だ。(3/6) 傷ついた左足の拡大

 悩みながら見ていると、ヒョッコンヒョッコンとケンケンをしながら片足で移動することは出来るようだ。当面の空腹を救うため、都合でしまってあった古い米を給餌することにする。ネパールなどの苦しく貧しい生活をしている子どもたちのことを思えば、贅沢な行為だとは思うけれども、一つの命として変わりはない。
 二人並んで、いや二羽並んで仲良くお米をついばんでいた。そのうちいきなり二羽とも飛び発ったではないか。片足でも「離陸」出来るのだ。これで猫などから逃れることは十分出来る。一安心である。

 いつものようにキジバトは毎日やって来ていた。ところが時に一羽だけのときがある。元気なメスのほう一羽のときは、ついに命尽きたのかと心配してしまう。ところがそのうちヒョッコン・ヒョッコンとオスがやって来ることもあって、胸をなでおろす。
 彼を見かければ急いでお米の「給餌」をしなければならない。動くのが面倒くさいのであろう、庭に出て行っても頭上50センチのところでキョトンとした目をしたまま待っているようになった。
 交代で来るとすれば営巣を始めたのか、などと思っても見たり、その姿を見るまでは毎日気の休まることがない。
 
 今日19日、一羽でやって来たオスの様子を見ると、少しずつではあるが足の状態がよくなっているように感じられる。歩き方、その移動の仕方が左足を僅かながらでも使うようになっている。この調子で回復すれば、もとの元気な体に返ってくれることは間違いないだろう。
 病気すなわち絶命でもないのか、などと妙な納得をする。
 傷ついた姿を、突然目にしたときの小さな衝撃を思い出しながら、春も近い庭で米粒をついばんでいるキジバトを眺める。

二羽で、仲良くね (3/12) 随分、よくなったようだ (3/19)

【追記】3月24日、早朝の風雨のなか、1羽が軒下の物干し竿にやって来ていました。外に出てみると、すぐにいつもの給餌場所、庭石の上に降りてきました。「お前、元気なほうか・・・」と言いながらよく見れば、左足を僅かにかばって歩いています。「なんじゃ、お前のほうか、大分ようなったのう」と話しかけます。元気な1羽と間違えるほどに回復しています。これでもう完全に大丈夫というところでしょう。安心です。追加報告まで。

● 毎日、庭においでのジョナやんとキジバトについては、→ こちら
● キジバトが放棄した営巣と、ヒヨドリの子育ては、→ こちら
● ネパールの子供たちについては、 → こちら
●その後の経過については、こちら → 「傷ついたキジバト、その後」 へどうぞ
「キジバトとキジネコ、鉢合わせ」へ戻る

← 「エッセイ一覧」へ   ← トップページへ

inserted by FC2 system