No.2   お湯とお茶、雀はどちらが好きか  2005/2/25


 どのような用件であったのかは忘れてしまったが、知人のKさんとの電話で雀の話が出た。
 彼の家には10年以上も飼っている雀が一羽いた。喉の渇いたとき「お湯が要るのかお茶が要るのかと聞くと、うちの雀はちゃんと答える」とKさんは言う。
 雀は、だいたいどちらを好むのであろうか?

 雀の寿命はおよそ1年から1年半くらいといわれている(唐沢孝一『スズメのお宿は街のなかー都市鳥の適応戦略ー』中公新書1989、ほか)。10年ともなれば相当の「長寿雀」である。平均1年3ヶ月程度だろう、と自然観察会などで披露すると、多くのヒトは驚く。あまりに短いというのである。
 Kさん宅のようにヒトに飼われた場合では、14年という記録も報告されている。
 平均1年ちょっとではいかにも短命のようであるが、私は驚くに足りないと思っている。ヒトの場合は、不都合な部分をその都度「修理」したり、極端な場合は「部品交換」などをして生きながらえているからだ。
 私などすでに最低3度は「亡くなっている」と思っている。記憶にもない幼少の頃、大腸カタルに罹り、医者が「治っても、まともな子にはならん」と言ったそうである。その予言が当たっているのを感謝すべきかどうか・・それは判然としないが、まずそこで絶命のはずであったろう。
 20代初めに「虫垂炎」と手術不良で1ヶ月も入院、30代初めには「急性肝炎」で延べ160日も入院した。これら「修理」がうまく行ってなかったならば、ヒトの平均寿命短縮の一翼を担っていたことは確かである。

 自然のままに生きれば、雀の寿命が1年半程度なのは「不自然」なことではない。ヒトは自分たち人間社会の尺度で判断するから、極端に短いと感じるのであろう。
 その年生まれの幼鳥たちにとって冬の寒さや食餌の欠乏、病気、外敵からの捕食など多くの悪条件のせいで、翌年の春まで生き延びるのは容易なことではない。地球上でただ1種「ヒト」を除けば、あらゆる生物に「お医者さん」はいない。ただしこれは「野生の生物」とすべきで、ペットなどとして「就職」すればお医者さんもちゃんと診てくれることになる。

 ところで雀はお湯とお茶、どちらを好むのであろうか。Kさんはお茶の方だという。
 理由は至極簡単、お分かりだろうか。雀は「Yu」とは鳴かないからである。Kさんと雀とのやりとりが偲ばれる。

 1992年5月13日撮影。
 
 巣立ち後もしばらく親から
 給餌され、餌の取り方など
 も教わるようである。
 この子は来年まで生き延び
 られるか・・・

「唐沢孝一ホームページ」は
 こちらから
 


← 「エッセイ一覧」へ    ← トップページへ

inserted by FC2 system